無節操なスクラップ帳、のはずがほぼ Matt bomer の写真収集用になってしまいました / 今後は三次用として使用
 
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ゆうぐれ   谷川俊太郎
 
 
ゆうがた うちへかえると
とぐちで おやじがしんでいた
めずらしいこともあるものだ とおもって
おやじをまたいで なかへはいると
だいどころで おふくろがしんでいた
ガスレンジのひが つけっぱなしだったから
ひをけして シチューのあじみをした
 
このちょうしでは
あにきもしんでいるに ちがいない
あんのじょう ふろばであにきはしんでいた
となりのこどもが うそなきをしている
そばやのバイクの ブレーキがきしむ
いつもとかわらぬ ゆうぐれである
あしたが なんのやくにもたたぬような

谷川俊太郎/ポエトリージャパン

674 notes

浄土   谷川俊太郎
 
 
ぼくはぼくであることから逃れられない
ふたつの目と耳ひとつの鼻と口の平凡な組み合わせを
ぼくは恐れ気もなく人前に曝してきた
それは多分ぼくに隠すべきものがあったから
汚れたタイルに囲まれた部屋で死んだばかりの友人に再会した時
彼は血と内蔵を抜き取られ
難破した一艘のカヌーのように解剖台に打ち上げられていた
もう何も運ばず何も隠していなかった
ぼくらに残されたのは白日に見まがう蛍光灯の光だけ 闇よりも明るさのほうが恐ろしい
きらめく海を背にするとどんな醜いものも美しく見える
限りないものの前でぼくらは一粒の砂に帰る
耳に聞こえてくるのは罵声とも笑声ともほど遠い波音…… もし浄土とやらへ行ってしまったら
ぼくはどんな顔をすればいいんだろう
仏だか天使だかに何もかも見通されてしまったら 不死だったら失ったに違いないものをぼくは隠している
隠していることに自分でも気づかずに
人々の仏頂面に取り囲まれ死すべき命の騒々しさに耳をおおって
ぼくは初冬の木々の影のまだらの中にいる

谷川俊太郎/ポエトリージャパン

6 notes

「決着」

私は私の人生の中で 
あの出来事に決着をつけなければならないし 
彼は彼の人生の中で決着をつけなければならない 
それぞれの道なのだ 

一緒に進まないと決めた時に 
課題はそれぞれに残された 
相手がどうということではなく 
きっと思うことは違うはずで 
同じ境地には達し得ない 

ひとつの出来事を双方の見方で体験し 
それぞれの感覚で受け止めた 
それぞれ違う形の傷を自分で癒すしかない 
相手にはわかりっこないのだ 
私の傷の深さなど 

わかりあえない相手に同意を求めるのはやめよう 
謝罪も涙も悔恨も 求めて救われるわけじゃない 
私たちはそれぞれの人生の中で 
あの出来事に決着をつけなければならない

(Source: ginironatsuo.com)

4 notes

わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差だけを残し皆発っていった

わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った

わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり卑屈な街をのし歩いた

わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのように
                   ね

わたしが一番きれいだったとき 茨木のり子(詩人)作品集・2

11 notes

もはや
いかなる権威にもよりかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみでたっていて
なに不都合のことやある
よりかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ

倚りかからず 茨木のり子(詩人)作品集・1

2 notes

無形文化財などと
きいた風なことをぬかす土地柄で
貧乏のネウチ
溜息のネウチ
野心を持たない人間のネウチが
どうして高嶺を呼ばないのか

JA8MRXのHP 石垣りん 「落語」

0 notes

美に関する製作は公式の理念や、壮大な民族意識といふやうなものだけでは決して生れない。さういふものは或は製作の主題となり、或はその動機となる事はあつても、その製作が心の底から生れ出て、生きた血を持つに至るには、必ずそこに大きな愛のやりとりがいる。それは神の愛である事もあらう。大君の愛である事もあらう。又実に一人の女性の底ぬけの純愛である事があるのである。自分の作つたものを熱愛の眼を以て見てくれる一人の人があるといふ意識ほど、美術家にとつて力となるものはない。作りたいものを必ず作り上げる潜力となるものはない。製作の結果は或は万人の為のものともなることがあらう。けれども製作するものの心はその一人の人に見てもらひたいだけで既に一ぱいなのが常である。私はさういふ人を妻の智恵子に持つてゐた。その智恵子が死んでしまつた当座の空虚感はそれ故殆ど無の世界に等しかつた。作りたいものは山ほどあつても作る気になれなかつた。見てくれる熱愛の眼が此世にもう絶えて無い事を知つてゐるからである。

智恵子の半生 高村光太郎 智恵子抄 

28 notes

あの頃

人を信ずることは人を救ふ。
かなり不良性のあつたわたくしを
智恵子は頭から信じてかかつた。
いきなり内懐(うちふところ)に飛びこまれて
わたくしは自分の不良性を失つた。
わたくし自身も知らない何ものかが
こんな自分の中にあることを知らされて
わたくしはたじろいだ。
少しめんくらつて立ちなほり、
智恵子のまじめな純粋な
息をもつかない肉薄に
或日はつと気がついた。
わたくしの眼から珍しい涙がながれ、
わたくしはあらためて智恵子に向つた。
智恵子はにこやかにわたくしを迎へ、
その清浄な甘い香りでわたくしを包んだ。
わたくしはその甘美に酔つて一切を忘れた。
わたくしの猛獣性をさへ物ともしない
この天の族なる一女性の不可思議力に
無頼のわたくしは初めて自己の位置を知つた。

高村光太郎 智恵子抄

2 notes

私の家はちいさいのに暮らしが重い

二本の足で支えているのに

屋根がだんだんずり落ちてくる

しかたがないので

希望とか理想とか

幸福とかいうもの

それらの骨格のようなものを

ひとつずつぬき捨て

ついに背骨までひきぬいてしまい

私のからだはぐにゃぐにゃになってしまい

どうぞこの家

過去のしがらみ

仏壇ばかりにぎやかに

仏壇の中に台所まであり

毎日の料理もそこでつくられる

その味わいの濃さ

血の熱量に耐えられますように

と両手のなかで祈るうち

私の胴体からは

タコみたいな足が生えて

四本も五本も生えて

八本にもなつて

さあこれでどうやら支えられると安堵したら

その足を食べにくる

見たような顔をした不思議な人間

あなたは?

と聞けば

親だという

誰々だという

忘れたの?

という

私は首をふつて涙をこぼす

いいえ

私の同族ではない

私はタコです 人間ではない

けれどタコの気持ちは人間に伝わらなくて

八本の足が食べられる

きのう一本 今日一本

悲しまぎれに

六本足を食べられた

と言いふらしたら

人間の足はもともと二本

二本足の人間なら

言ってはならないことがある

と 私を愛する家族がいう

口をとがらせてみても

吸いこんでみても

広い 深い

正真正銘の愛というものが

海のようにとりまくので

かぎりなくとりまくので

私の足は減ったところから

またどうにかたべられそうな格好で

生えてくる

JA8MRXのHP 石垣りん 「生えてくる」

0 notes

それでもまだ信じていた

戦いが終わったあとも

役所を

公団を

銀行を

私たちの国を

あくどい家主でも

高利貸しでも

詐欺師でも

ない

おおやけ

というひとつの人格を

「信じていました」

とひとこといって

立ちあがる

もういいのです

私がおろかだったのですから

JA8MRXのHP 石垣りん 「女」

0 notes

ふくれた腹をかかえ
口をぬぐえば
台所にちらばつている
にんじんのしっぽ
鳥の骨
父のはらわた
四十の日暮れ
私の目にはじめてあふれる獣の涙

JA8MRXのHP 石垣りん 「くらし」

0 notes

そうです
下手だからみっともないという
それは世間体
遠慮や見得のまじり合い
そのかげで
私はひそかに
でも愛している
自分が描いた
その対象になったものを
ことごとく愛している
と、きっぱり思っているのです

「不出来な絵」 石垣りん - 身辺雑記そして… - Yahoo!ブログ

1 note

戦闘開始

二つの国から飛びたった飛行機は
同時刻に敵国上へ原子爆弾を落としました

二つの国は壊滅しました

生き残ったものは世界中に
二機の乗組員だけになりました

彼らがどんなにかなしく
またむつまじくくらしたことか―

それは、ひょっとすると
新しい神話になるかもしれません。

石垣りんさんの詩「原子童話」 - 光の翼

1 note

ただはららかにはららかに涙を含み、
あたたかく息づいてゐて下さい。
――もしも涙がながれてきたら、

いきなり私の上にうつ俯して、
それで私を殺してしまつてもいい。
すれば私は心地よく、うねうねの暝土(よみぢ)の径を昇りゆく。

中原中也 山羊の歌 「盲目の秋」

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この生(いき)づくりにされたからだは
きれいに しめやかに なまめかしくも彩色されてる
その胸も その脣(くち)も その顏も その腕も
ああ みなどこもしつとりと膏油や刷毛で塗られてゐる。
やさしい五月の死びとよ
わたしは緑金の蛇のやうにのたうちながら
ねばりけのあるものを感觸し
さうして「死」の絨毯に肌身をこすりねりつけた。

萩原朔太郎 青猫 「五月の死びと」

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